癒しの部屋 心にやさしい料理

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 第1回 「涼やかな 夏の和菓子」
この人の癒しのスタイル
和菓子創作家金塚晴子さんレシピ

 金塚晴子さんの和菓子には、見ための美しさと素材の甘さを生かした優しさがあります。
基本をくずさず自由な発想でつくり出す金塚さんの和菓子は、その斬新さとおいしさで、食べた人たちを魅了してしまうようです。
 最近は、雑誌やテレビの料理番組にも出演したりと、多忙な日々を送られている金塚晴子さん。どうやら、その魅力は和菓子の作風だけではなく、そのお人柄にもあるようです。

金塚さん 写真
金塚晴子さん
 季節和菓子「へちま」主宰。レコード会社のディレクターとして、山口百恵や南沙織をはじめ数々のヒット作品の制作に携わる。18年勤めた後、42歳で会社を辞め和菓子学校に入学、卒業。現在は、注文和菓子の製作のほか、スタジオで20クラス、160名の生徒に教えている。著書に『ホームメイド和菓子』(文化出版局)『電子レンジとフードプロセッサーで和菓子ができる』(講談社)等がある。3月13日には5册めの本『キッチンでつくる茶席の和菓子』(淡交社刊)を発売。
撮影/上牧 佑
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 お話をうかがおうと訪ねた、中目黒の和菓子工房「へちま」の玄関ドアには、天然乾燥をさせた“へちま”が下がっていました。レコーディング・ディレクター時代の多忙さはもうやめて「夏はぶらぶらしていたい」(和菓子の仕事は夏が比較的ひまだということで)という、金塚さんの願望が込められているのだとか。想像どおりのやさしい笑顔でドアを開けて迎えてくれた、金塚さんの魅力に迫ってみます。
金塚さん 写真 和菓子との出会いは、16年ほど前。音楽ディレクターとして忙しかったころ、気分転換に寄った図書館で和菓子の本を手にとったのがきっかけでした。毎日遅くまで、打ち合わせやスタジオでのレコーディングに明け暮れていて、そんなとき本の中で再発見したのが忘れかけていた季節の色合いだったのです。
 それからは、何かに吸い寄せられるように“自分でもつくってみたい”と思い始め、会社をやめて、42歳で未知の世界、製菓学校に入学しました。和菓子職人を目指す人たちと一緒に2年間、和菓子づくりの基礎を学びました。いよいよ卒業となったころ料亭のデザートをつくる仕事をいただくことになり、和菓子工房「へちま」がスタートしました。
 ディレクター時代の生活はお昼ごろに起きて1時ごろ会社に行き、翌日の明け方に帰るという生活だったのに、今は朝5時におきて夜9時にはもう眠くなっちゃう(笑)。もともとのんびりしているタイプだから、この生活が今の私には調度いい感じなんですよ。
 仕事としても、和菓子ならではの楽しさがあってストレスはあまりたまらないですね。昔も自分の好きにやっていましたけれど(笑)、レコードはどんなに頑張ってつくっても、そのときの流行や歌手が所属する事務所との関係など、いろいろなことが作用して売れなかったり、喜んでもらえないことも多々ある世界。常に“数字”で評価されるわけだから、自然とプレッシャーがかかってました。その点、和菓子は自分がつくりたいもの、食べたいものとお客様が求めているものが意外と一致していることが多いんです。だから「一生懸命味や色、かたちを考えて手を抜かないでつくっていけば必ず喜んでもらえる」そんな気持ちでつくれるのが幸せですよね。
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 もともとは不器用だったと自他共に認める金塚さん。だからできるだけ多くの人に、和菓子が簡単にできて、こんなに魅力的だということを知ってもらいたいと、本を出したり教室を開いたりしています。
金塚さん 写真 和菓子の一番の魅力は、自分の手の中ですべてができあがっていくという点。あんをこねたり丸めたり、それに色をつけたりかたちを整えたりしながら、自分の手で“季節”を表現できることが、和菓子ならではの楽しさです。使う材料も油はほとんど使わず、豆やお芋などの野菜や果物なので、とてもナチュラル。
 また、いろんな意味で五感を刺激してくれるのも魅力です。温かくてきめの細かいあんやもちに触れているときのあの手ざわり。“もち肌”といわれるくらいですから当然なんですが、すべすべしていて気持ちがよく、すごく和みます。
 そして、お豆が煮えてきたときの香りと湯気。特に“あずき”をゆがいたときの甘い香りは、何ともいえず豊かな気分になれます。おなべのふたを開けたとき、湯気がふわっと自分を包む瞬間も、ほんわかとした幸せな気分に浸れますね。
 和菓子に色をつけるための前段階で“色をつくる”作業というのがあるのですが、この作業は特に私が好きな作業なんです。水を入れたグラスに、ぽとっと一滴色を落とすと水の中にわぁっとその色がひろがって、なんともいえない夢心地になれるんです。
 色といえば、今回レシピに入れたピンクとグリーンの組み合わせの「茶巾しぼり」。あれも、ピンクの色だけがよくてもだめなんです。「グリーンと合わせてみたらどうなるかな…」というふうに、色の組み合わせをイメージしながら色をつけていきます。微妙な色合いをだすために、ほんのちょっと違う色を差し色でつけてみたりしながら、色をつくったり組み合わせたりする楽しさも和菓子の欠かせない魅力のひとつです。
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 和菓子をつくることが楽しくてしょうがないといった感じの金塚さん。そうはいっても、最近は趣味でつくる時間を捻出するのも大変な忙しさ。「年中和菓子をつくっているから、自分が買うとなると、ついついケーキを買ってしまいがちなの(笑)」と、冗談のような本当の話しも出てきて…。そして和菓子の魅力のもう一面についても、話してくれました。
金塚さんの本 和菓子は自分が癒されるのと同時に、それを誰かにプレゼントして喜ばれるというのも魅力なんです。ケーキを誰かにプレゼントしても今は「あら、つくったの?」という感じだけど、和菓子は誰も手づくりするものだと思っていないから、大抵は「えッ、つくれるの? すごい!」と、びっくりされてとても喜ばれます。うちの生徒さんもよく言ってますけど「練りきり」なんて難しそうに見えて意外と簡単だから、そういったものをつくって、きれいにパッケージにしてプレゼントすると、本当に喜ばれるんだそうです。
 私も先日、知人にお孫さんが生まれて「何か名前にちなんだお祝いの和菓子を…」と依頼されました。そのお孫さんの名前が“美月”ちゃんだとお聞きしたので、お月さまをイメージした「黄色いきみしぐれ」と、うさぎの形をしたお菓子を添えて、月見を連想させるパッケージにひと工夫しました。和菓子ってこんなふうに“その人のためのお菓子”というのをイメージしてつくりやすいんですね。言葉をかたちにあらわしやすいし。今回ご紹介する「茶巾しぼり」も、ピンクとグリーンで桜と柳を表現して“都の春”と名付けています。同じ作り方でも、秋なら色を黄色とオレンジにして“紅葉狩り”となります。そのときの状況で、思いや言葉をお菓子にたくせるという楽しさがあるんです。
 和菓子は“ことば”や“想い”を形にして表現できるため、つくる側と送られる側のお互いのコミュニケーションもとりやすいものだと思います。つくる側はどんなものを贈ったら喜ばれるか、どんなお菓子で気持ちを表現しようかと考えながらつくる。そして相手が箱を開けた瞬間「わぁっ」って喜んでくれたときのうれしさ。お互いの心が一つになって和む瞬間は本当にうれしいものですよ。
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金塚晴子さんの自宅でできる手作り和菓子
和菓子を作ってみませんか

金塚さん写真
 今回は金塚先生に、自宅で簡単につくれる和菓子作り方を教えていただきました。色の組み合わせなどで季節を問わず応用できる「茶巾しぼり」と、夏のひとときを楽しいものにしてくれる「錦玉」の2点です。
和菓子の写真

●あんずと抹茶カステラの錦玉 ●茶巾しぼり“都の春”
材料(12×7.5×4.5cmの流し缶一缶分)   材料(10個分)
干しあんず 9個
(2つ割にして耐熱ボールに入れ、大さじ1の水をかけてレンジに30秒ほどかけやわらかく戻しておく)
レーズン 適宜
抹茶カステラ(市販品) 12×7.5×2cmに切って、流し缶の底にぴったり入れておく
粉寒天 2g
200cc
グラニュー糖 100g
 
白あん(市販品で) 300g
山芋(大和芋・つくね芋等) 100g
(皮をむいた正味)
上白糖 40g
食用色素 (赤・緑)

作り方

作り方
寒天と水を耐熱ボールに入れ、レンジに1分かけて取り出しヘラでよく混ぜ、グラニュー糖を加えてなお混ぜる。
をレンジに再度1分かけ取り出し、ヘラでグラニュー糖を溶かすように混ぜる。
さらにを2〜3分(途中レンジの中を見ていて、沸騰してから40秒ほどたったらOk)レンジにかけ、取り出す。
流し缶のカステラの上にあんずとレーズンを並べる。
をヘラで静かにかき混ぜてから粗熱をぬき、少しヘラが重く感じるようになったら、4のカステラの上にレードルで1〜2杯を表面にうすく、まんべんなく流し入れる。少し間をおいてから残りを静かに全量流し入れる。
(最初から全量を一度に入れるとカステラに吸い取られてしまうことがある。)
 
白あんを耐熱ボールに入れ、レンジで2〜3分加熱しパサッとするまで水分を飛ばす。
山芋は1cm厚さの輪切りにして茹で、裏ごしし、熱いうちに上白糖40gとよく混ぜておく。
をヘラ等でよく混ぜる。
を2等分し、ごく少量の水で溶き混ぜた色粉で、片方を薄いピンクに、もう一方を薄緑に染める。
おのおのを5等分し両手で包み込むようにしながらまるめ、できあがったらひとつづつの玉をまん中からナイフか糸で半分に切る。
別の色の半球どうしをしっかりくっつけ、手にのせたガーゼまたは絹の布巾で茶巾絞りにする。(写真参照)


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